米国の物価上昇が続く
コロナ禍は全般として緩和に向かい、世界経済は濃淡ありながら回復傾向を維持しています。先進国経済は消費が好調な米英がけん引し、ユーロ圏、ロシア景気はコロナ変異株の影響により、中国景気は電力不足や不動産部門の軟調により弱含んでいます。インド、アセアン諸国はコロナ変異株の悪影響が緩和され、経済活動の再開により急回復しているとみられます。
物価は米国で上昇が続いています。原油高の中、消費活動が活発化しサプライチェーンの混乱など供給制約も加わって10月の消費者物価指数は前年同月比6%以上となりました。グローバルな物価高は各種の供給制約が解消されればじきに落ち着くとの見方に対し、米連邦準備理事会の議長は22年中も供給制約が続くだろうとの見解です。
足元でグローバル物価動向の起点となっている米国では、変動が緩やかでインフレ期待を反映しやすいと考えられる家賃が上昇しており、何らかのショックがなければ今後2~3年は物価の上昇傾向が続きそうです。リーマンショック後の資源価格を起点としたグローバルな物価高は、シェールや太陽光発電の開発を促進し、その後商品先物が乱高下する中、全般的な物価は2012年頃から安定に向かいました。
国内金融市場では円が円安傾向を維持しています。昨今の日本企業は工場を海外に移しており、円安は輸出を通じた企業業績の改善にはそれほど寄与せず、輸入物価の上昇によりコスト高になる傾向がかねてより指摘されてきました。高付加価値製品は円安によってもあまり輸出数量を伸ばさない傾向にはありますが、世界賃金が上昇する中での円安傾向は国際観光の再開、農産品など輸出全体にはプラスとなります。
物価見通しをベースとした金利差要因により2~3年に限り円安傾向が続くとすれば、観光・輸出産業で体力回復を図る一時的な機会となり、政府が円安政策を継続・強化し10年続くとすれば地産に軸足が移り、自動車産業に代表される新技術開発、労働集約産業でのロボット化など本格的な輸出振興策が有効となります。高まる地政学リスクに加え産業の国際競争力低下が続く足元において、円安政策は米国に容認されやすいでしょうから、国力維持のために後者の道が選ばれそうです。
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