世界経済~物価が上昇傾向
世界経済は米、欧を中心に回復傾向が続いています。金融市場における目先の関心事は主要国の物価上昇です。
グローバルな物価上昇は、主に、原油価格上昇による一時的なもの、コロナ下での特殊要因による一時的米国要因、中国での賃金上昇による構造的な始まり、などにより説明されています。
物価動向はリーマンショック後も大型財政、金融緩和下で今回同様の上昇現象が見られました。一方、中国要因については当時と違いが生じています。前者の一時的要因については、世界的な財政、金融緩和により資源、食料など国際商品先物の急騰に先導され、中国での豚肉価格上昇も中国国内の物価上昇を引き起こし、グローバルな物価の上昇傾向を引き起こしました。市場では金融要因というよりは、需給要因による説明を主流になされていたよう覚えています。これは証明が難しく、また業界の都合によったのではと思われます。
最近の米国での物価上昇は、コロナ対策による諸条件の変化、労働供給の鈍りなどによるもので一時的との見方が多いようです。ただし、生活、社会環境の変化による要因、以前のように労働供給が回復しない、などが絡んでいれば、インフレ構造は変化しており、物価の上昇圧力は構造的に高い状況が続くと考えられます。
中国の構造要因については、短期的、急激な物価上昇要因とはならないものの、少子高齢化により労働力率が低下し、漸進的、長期的な賃金上昇が物価を押し上げるというかねてからの見方が、示現しているのか否かがポイントです。
リーマンショック後、最近まで安価な中国製品の効果でグローバルな財価格はデフレ圧力が働いていました。中国製品価格はグローバルマーケットでベンチマーク的な役割を持っていました。これに対し、中国の就業者数は2018年に57年ぶりに減少に転じるなど、中国での賃金上昇圧力によりコストプッシュ型のインフレ時代に入ったとも考えられ、政府施策がこれを緩和するかによりそうです。
中国の5月の消費者物価は前年同月比+1%台で穏当に推移した一方、5月の生産者物価指数は前年同月比+9.0%と上昇率が加速しました。原材料の高騰などによるもので、小売市場の回復が顕著となれば、年後半にかけて価格転嫁により消費者物価にも上昇圧力が加わると考えられます。今のところ賃金上昇の影響はあまりなさそうです。この構造要因がグローバル物価に顕著に反映されるのはまだ先で、グローバル化の巻き戻しによる物流の停滞などの影響が、今後数年は大きく影響するのではないかと思います。
年内は、日米欧のマネーサプライが急増しており、その影響のタイムラグを考慮すると物価の上昇圧力は高い状態が続きそうです。市場でのリスク選好が低下し商品市況全体の基調が転じるのは、テーパリング(金融緩和の出口戦略)が来年以降となり、中身はソフトと見られているので、その後となりそうです。
米長期金利は今年4月に入り低下傾向にあるものの、これらや世界景気の回復傾向が続いていることから、スピード調整にとどまり基調に変化はなさそうです。
国内ではオリンピックの開催について賛否両論報道されています。慎重な意見、世論も、ここまできたら腹をくくって開催すべき、と徐々に転じていくのではないでしょうか。
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